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「紅白歌合戦とジャニーズ事務所」の歴史に田原俊彦が残した功績

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大晦日に行われる『第66回NHK紅白歌合戦』には、ジャニーズ事務所から近藤真彦、SMAP、TOKIO、V6、嵐、関ジャニ∞、Sexy Zoneの7組が出場する。同じ事務所からの大量選出に批判的な声もあるが、事務所設立から53年間の紆余曲折を経て、現在の地位を勝ち取ったことは忘れてはならないだろう。

ジャニーズ事務所は、設立当初から紅白歌合戦を席巻していたわけではない。初出場は1962年の事務所設立から3年後の65年、あおい輝彦など4名で構成されていた「ジャニーズ」が成し遂げた。ただし、ジャニーズの出場はこの1回きりに終わる。

初期のジャニーズ事務所を支えたのは、フォーリーブスだった。デビュー3年目で紅白初出場を決めると、以降7年連続で選出。最後となった76年の他の出場者を見ると、堺正章、五木ひろしが6回目、内山田洋とクール・ファイブが5回目。芸能史に名を残す大物たちよりも、この時点ではフォーリーブスのほうが多く出場していた。
紅白歌合戦とジャニーズ事務所という観点から見れば、70年代はフォーリーブス抜きに語れないのだ。そのなかでもう一人、ジャニーズ事務所からは郷ひろみが73年に初出場を果たしている。だが、郷は75年春に移籍しており、70年代後半になるとジャニーズ事務所は紅白歌合戦出場歌手を生み出せなくなってしまう。

その窮地を救ったのが、たのきんトリオだった。79年、『3年B組金八先生』(TBS系)の生徒役として田原俊彦、近藤真彦、野村義男の3人が抜擢されると、瞬く間に大人気に。のちに、たのきんトリオと命名される。
3人の先陣を切って、田原俊彦が80年6月に『哀愁でいと』でレコードデビューすると、同年末の紅白にジャニーズ事務所所属タレントとしては4年ぶりの出場を果たしている。

当時、アイドルがレコードデビュー年に紅白出場を成し遂げることは非常に困難だった。70年代に“新御三家”と呼ばれた3人も、デビュー年での悲願達成はならなかった。郷ひろみ、野口五郎は2年目、西城秀樹は3年目に初出場をしている。女性アイドルに目を向けると、ピンクレディー、山口百恵、桜田淳子、天地真理、榊原郁恵、石野真子が2年目、キャンディーズが3年目と名だたるアイドルでもデビュー年の紅白出場はあまりに高い壁だったのだ。ただし、岩崎宏美と南沙織は1年目に出場を果たしている。

名前が多数上がることからもわかるように、当時は女性アイドルのほうがスポットライトを浴びやすく、紅白選出においても男性アイドル自体への評価は決して高いとは言えない時代だった。
79年の紅白出場者を見ると、白組のアイドルは新御三家である郷ひろみ、西城秀樹、野口五郎の3人のみ。サザンオールスターズやゴダイゴという“ロック・バンド”が初出場を果たしているものの、フランク永井(23回目)や三波春夫(22回目)、村田英雄(18回目)といったベテランが並び、半数以上は演歌勢がノミネートされている。トップバッターから6番目までを見ても、紅組は渡辺真知子を除き5人はアイドルと定義されてもおかしくないメンバーが揃っているが、白組は渥美二郎、新沼謙治、角川博という演歌勢が半数を占めている。

当時の紅白において、男性アイドルは不利な立場にあり、ジャニーズ事務所も苦戦を強いられていた。
だからこそ、80年の田原俊彦の出場はエポックメイキングだった。紅白の舞台には近藤真彦と野村義男も応援に駆け付け、田原が『哀愁でいと』を歌うと、途中からステージに上がり、3人で熱唱。たのきんトリオの晴れ舞台は見事に完結した。

ジャニーズ事務所からは翌年に近藤真彦、翌々年にはシブがき隊が続いた。近藤真彦は80年12月デビューだから実質1年目、シブがき隊は正真正銘のデビュー年に紅白出場を果たしている。その後もジャニーズ事務所は少年隊が実質デビュー年に、男闘呼組、忍者、SMAP、TOKIO、NYC boysがデビュー年に紅白に選ばれている。「デビュー年に初出場」の流れを作ったのは、たのきんトリオであり、田原俊彦だったわけだ。

紅白歌合戦は84年に西城秀樹、郷ひろみ、田原俊彦、近藤真彦、シブがき隊、チェッカーズとアイドルが白組20組中6組と3割を占め、そのうちの半分はジャニーズ事務所所属のタレントだった。79年、白組のアイドルは24組(特別出演含む)中3組で1割強だったことを考えると、わずか5年のあいだで紅白歌合戦は大きく変貌を遂げた。

そして、田原の出場以降、ジャニーズ事務所は36年連続でNHK紅白歌合戦に所属タレントを送り込んでいる。
たのきんトリオ人気に沸く80年田原俊彦の出場を皮切りに、男性アイドル、ジャニーズ事務所は紅白歌合戦において市民権を得るようになったのである。

(文:シエ藤)

【シエ藤さん出演情報 from STNstaff】 12月29日(火)下北沢の書店「B&B」で、『中居正広という生き方』の著者・太田省一さんが語る「紅白歌合戦とジャニーズとSMAP」というトークイベントに、シエ藤さんも登壇します。

※イベントチケットの予約・購入に関するご案内はこちら
■関連リンク
B&B

出演
太田省一(社会学者)
シエ藤(芸能研究家)
神田桂一(フリーライター)

時間
20:00~22:00 (19:30開場)

場所
本屋B&B世田谷区北沢2-12-4 第2マツヤビル2F

入場料
1500yen +500yen 1 drink order

【出演者プロフィール】
太田省一(おおた・しょういち)
社会学者。テレビの歴史に長年関心を持ち、お笑いやアイドルなどその周辺文化についての造詣が深い。著書『紅白歌合戦と日本人』(筑摩選書)、『社会は笑う・増補版』(青弓社)、『アイドル進化論』(筑摩書房)。今年7月に刊行した『中居正広という生き方』(青弓社)が話題に。

シエ藤(しえふじ)
ライター、芸能研究家。ほかの研究分野・生島ヒロシ、松木安太郎、岡本夏生、田原俊彦、チェッカーズ、プロ野球選手名鑑、視聴率。『ザ・ベストテン』、『欽ちゃん番組』など80年代の芸能ロスを抱えながら生きている。三遊亭好楽には懐疑的。

神田桂一(かんだ・けいいち)
フリーライター・編集者。 一般企業に勤めたのち、週刊誌『FLASH』の記者に。その後、なんやかんや渡り歩き、フリーに。雑誌は『ポパイ』『ケトル』『スペクテイター』など、ウェブは『やまもといちろうメルマガ』『本の雑誌』『cakes』、マンガ『アイアムアヒーロー』のリサーチなど節操なく活動中。


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